インド英語の特徴はアクセントが少なく、抑揚がない。ヒンディー語が影響している。thの発音がタ行に近い音に聞こえる。


インド英語とは

発祥・歴史

インド英語は、インダス文明から始まるインドの長い歴史によって形成されてきました。

13世紀以降のデリー・スルターン朝からインドの公用語と文章語はペルシャ語でしたが、イギリスに植民地化された19世紀半ばから、被支配者のインド人と支配者のイギリス人を取り持つインド人エリート養成のため、イギリス式の英語教育が導入されました。

それから現在まで、英語はインドで独特の地位を固め、インドがイギリスから独立するときには英語を廃止する動きがあったものの、ヒンディー語やウルドゥー語、ベンガル語など数十の言語を擁する多言語・多民族国家において、英語は地理的・民族的に中立であったため、公用語として生き残り、事実上、教育や行政を統べる言語として成長してきました。

インド英語のベースはイギリス英語で、今も学校教育の「英語」では学年が上がるにつれ、イギリス文学を中心とした英文学を学びます。

しかしインド英語はインド国内での成長過程で、特にヒンディー語やウルドゥー語から多くの語彙(ごい)を受け入れてインド英語独特の語彙(ごい)を発展させています。

発音に関しては、イギリス人やアメリカ人の発音をまねることはあまりなく、一部のエリートを除いては母語(ヒンディー語など)の影響を受けた英語を話しています。

衛星放送が普及した近年は、アメリカ英語をまねる若者も増えていますが、語彙(ごい)はアメリカ式でも発音はやはりインド式です。

インド国内での英語の使われ方

インドはいわゆる「多言語国家」で、中央政府と各州がそれぞれ公用語を制定しています。

インド政府が憲法で指定した主要言語は22あり、その中のヒンディー語やベンガル語などは知っている方も多いでしょう。

英語はこの22の中には含まれていないにもかかわらず、インドの社会経済において最も重要な言語です。

政府機関や裁判所の文書、高等教育やマスメディア、ビジネス、都市部の中間層以上の日常会話でも英語は当たり前に使われています。

実際、インド人は他のインド人の能力を英語力によって判断する傾向にあり、英語ができないとよい就職もできないでしょう。

また、中間層以上の家庭の子どもたちが通う私立学校では英語で授業が行われ、家庭では当たり前のように英語のニュースを見聞きし、英字紙を購読しています。

本屋、駅の売店でも売られている本は英語のペーパーバックです。

国(中央政府)の機関では公文書をヒンディー語と英語で記録することが憲法で定められていますが、実際には英語のみという場合が少なくありません。

普通の英語との違い

インドでは中央政府には政府の公用語、各州には州の公用語があり、英語は中央政府のみならず、ほとんどの州の公用語の1つです。

すなわち、インドでは中央政府でも各州でも英語と他の在来のインドの言語とが併用され、その過程で英語からインドの諸言語へ、インド諸言語から英語へとお互いに影響を与えあっています。

その結果、インド英語にもインドの言語の多様さが反映されています。

特に、インドの言語の発音がインド英語に与える影響は大きく、独特の発音が、多くの外国人にとっては聞き取りの際に戸惑うポイントなのです。

文法にもいくつかの特徴が現れます。

日本人にも英語の冠詞の扱いが苦手な人は多くいますが、インドの諸言語にも冠詞がないため、同様に苦手に思う人は多いようです。

インド英語では頻繁に冠詞の省略が行われますが、インド人たちはあまり気にしていません。

また、現在の一般的な英語と比べると、少し「古くさい」表現が使われる場合もあります。

これはイギリス植民地時代の名残(植民地時代と変わらぬ官僚制と文書主義は今も根強く残っています)であり、また、学校教育における英文学教育の影響です。